トラピスチヌ修道院 / 野呂希一

天使の聖母 トラピスチヌ修道院

天使の聖母 トラピスチヌ修道院

20代前半、当時バイトをしていたパチンコ屋で、仲良しだったお掃除のおばちゃん2人と北海道旅行へ行った。コースには函館のトラピスチヌ修道院も入っていたのだけど、売店かどこかにあった「修道女の生活」といった紙を見たとき、何故か「うらやましい」と思った。今ほど「教会大好き!」って訳じゃなかったのに。普段明かされない教会内部の写真は、そのときのことを思い出させてくれた。ただひとつ違うのは、憧れでなく「懐かしい」という想い。きっとかつては居ただろうという記憶を思い出すからだろう。
巻末にあるトラピスチヌ修道院の歴史は凄まじい。何度も火事で消失しながらも、今や観光地リストに鎮座するまでの道のりは、信じるものなくしては実現できなかっただろう。おひとりおひとりの祈りのちからの強さを思う。
世の中には、俗世にいるほうが修行というひともいるだろう。でもこの教会の修道女やお寺のお坊さんにしても、祈る場所を提供させてくれ、神様を思い出させてくれ、何かをするきっかけを与えてくれ、代わりに祈ってくれる彼らの存在意義は大変に大きい。