命あるかぎり―松本サリン事件を超えて / 河野 義行

命あるかぎり―松本サリン事件を超えて

命あるかぎり―松本サリン事件を超えて

河野さんを見るたびに胸が痛む。何故なら私自身もあの報道で犯人と信じたからだ。著作を読むにつけ、この平和な世の中でも冤罪とは誰にも起こりうるものであるということに慄然とする。そこにいた、たまたま通った、見かけた。いくら冤罪事件が明るみになって警察が糾弾されたとしても、捕まえるのもヒトであり、裁くのもヒトだ。個人情報保護法だって違反すれば裁かれると知ってたって、情報流出の大概は内部の人間だ。マスコミを信じた自分も含め、ヒトの脆弱さを思うと厭世感は極みに達するので、やめておく。
さて河野さんであるが、あの事件を乗り越えてきたご家族の絆には言葉も出ない。家族関係って一見強いようでいて至極脆弱だから。そして、かつての元信者を受け入れ、首謀者を「麻原さん」と呼ぶ河野さんの「許し」には頭が下がるばかりだ。うまくいえないけど、ほんとに、凄いと思う。なんつーか、全てにおいて自分に置き換えて考えてしまったから、ちょっと苦しかったな。でも読んで良かったと思う。