アントン 命の重さ / エリザベート・ツェラー

アントン―命の重さ

アントン―命の重さ

ナチスの時代、同じドイツ人でも障害者や同性愛者を虐殺していたことは知っていたが、背筋が凍るような彼らの生活を知ったのは初めてだ。
アントンは知的障害を持っているとはいえ、人の言葉も理解できるし、字だって書ける。考えも至極冷静。なのに同国人からの罵詈雑言、暴力、密告は読むに堪えない。アントン家族のように、障害の子供を命がけで守った一家は、同じドイツにどれだけいただろう。唯一の救いは、暖かいご近所の方々や知人達だ。自分達でさえ危険なのに、とてもとても暖かくアントンを守っている。自分がその立場だったら、私は彼らのように優しくいられるだろうか。かくまうことができるだろうか。そんなことが頭をぐるぐるした。
最後の方で、アントンがママのために書いた本は、とてもとてもすばらしかった。ほんとうに、すばらしかった。