向い風 / 住井すゑ

向い風 (新潮文庫)

向い風 (新潮文庫)

夫が戦死し寡婦となったゆみ。暇を貰う決断をしたゆみに、跡継ぎの心配をした義父から頼まれ、義父の子を産む。そののち夫が生還・・・。混乱っぷりは戦争の異常さを物語っているけれど、原因は「家」制度によるものなのか。今の時代から見れば驚きの連続だが、選択肢がなかった当時を思えばやむなし、なのだろう。救いだったのはどんな状況であっても、ゆみが奢ることも卑屈になることもなく、今できる最善の選択をしながら一生懸命生きていることだ。周りのひとびとも、色々あっても元は素朴なひとたちだ。おさまるところにおさまる感。
ゆみと夫・健一との心のつながりは、とても印象に残った。ひとは、たとえどんなものであっても、希望があれば生きていけるものなのだなぁ。戦争を生き抜いた亡き祖母に、話をきいてみたかった。