リンゴが教えてくれたこと / 木村秋則

リンゴが教えてくれたこと 日経プレミアシリーズ

リンゴが教えてくれたこと 日経プレミアシリーズ

リンゴの無農薬・無肥料栽培を成功させた農業家 木村さんの本。いやーかなり驚いちゃったね。私も親から「てんとう虫は益虫」と聞かされていたから畑で見つけてもそっとしていたが、場合、益虫も害虫になりうるなんて知らなかったし、スプレイヤーなどの機械が土を圧縮していることも意識してなかった。ましてや肥料も場合マイナスになり得るなんてと、驚きの連続だった。
ここまで経験を重ねるまでの、木村さんのご苦労には言葉を失う。農家のオヤジは一国一城の主ゆえ、オレ様度は高い(我が父も然り)。そんなひとたちの中、村八分にされても当時の常識を覆す農法をやり続けていらしたことは、マジですげーと思う。それもこれも、リンゴや自然に対する愛があるからだ。「自分がリンゴだったら」「自分が土だったら」と、動植物に関係なく相手の立場にたって考えること、ただひたすら見つめ続ける忍耐力、自然からのメッセージをキャッチしようとする素直さ、もういずれもが愛なのだ。愛を与えたら愛が返ってくる。これはモノであっても自然であっても、同じものなんだろう。
「何の手も加えないことが自然」と言うひともいるが、人間も自然の一部と素直に受け止めれば、その意見って傲慢ではないだろうか。木村さんのおっしゃるように、自然と仲良くしてゆくこと、これこそが本来の意味での「自然」なんだろう。