デッドエンドの思い出 / よしもと ばなな

デッドエンドの思い出 (文春文庫)

デッドエンドの思い出 (文春文庫)

よしもと作品を好きになって幾星霜。今回も静かで、流れてて、泣いたあと風に吹かれる感じ。短編「幽霊の家」は分かるなーって感じ。「デッドエンドの思い出」は、あとがきによると「一番よく書けた」とのこと、痛いほど分かった。男に振られて、お金は返ってこなくて、代わりに車が・・・と言えばそれだけなのだけど、頬に当たる風だとか、ひととの空気感とか、私の中に沈殿している言語化できない想いが言葉になった感がある。とても、よかった。「デッドエンド〜」の高梨くんの言葉は印象的。

「ずっと家の中にいたり、同じ場所にいるからって、同じような生活をしていて、一見落ち着いて見えるからって、心まで狭く閉じ込められていたり静かで単純だと思うのは、すっごく貧しい考え方なんだよ。でも、たいていみんなそういうふうに考えるんだよ。心の中は、どこまででも広がっていけるってことがあるのに。人の心の中にどれだけの宝が眠っているか、想像しようとすらしない人たちって、たくさんいるんだ。」