乙女心注入サプリ / 佐藤 真由美

乙女心注入サプリ

乙女心注入サプリ

今回は佐藤さんの作品はもちろん、古文等からのピックアップした短歌に佐藤さんの文章が付いている。佐藤さんの短歌はいつも大好き。特に「無理すれば週末デートできるのに もう無理しない自分に気づく」とか、思い当たるとこばかり。視点がいいよなぁ。
中でも印象に残ったのは、伊勢物語(p56)。

伊勢物語の男は、三年戻ってこなかった。その間、言い寄る男に「三年待って」と断り続け、ついに結婚する三年目の夜、女の戸を叩いたのは、新しい夫でなく戻ってきた男。戸をあけられない女が
「あらたまの年の三年(みとせ)をまちわびてただこよひこそ新枕(にゐまくら)すれ」
(三年間待ちわび続けて、とうとう今夜ほかの男と初夜を迎えるところなのです)

男が返したのが
「梓弓ひけどひかねどむかしより心は君によしにしものを」
(あなたがわたしの気を引こうと引くまいと、ずっと私はあなただけなのに)

その後 男は去る。女は、去った男を追いかけた途中に転んで死ぬ。

そんなんアリ???ってくらい悲劇なのだけど、追いかけ途中で死んだ女は幸せだと、死ねなかった私は思う。っても結局男は身勝手だということにして、私は待たないことにした。