奪われた記憶 / ジョナサン・コット

奪われた記憶―記憶と忘却への旅

奪われた記憶―記憶と忘却への旅

鬱病治療のために計36回の電気けいれん治療(ECT)を受け、結果 過去15年間分の記憶を失った、敏腕インタビュアー ジョナサン・コットの本。ショックだったのは「人はいかに、記憶によって支えられているか」ということ。家族との思い出、学生時代、悩み苦しんだこと、嬉しかったこと、それらの引き出しがあるからこそ、人が人として生きていけるのだ。
Memoryの語源となったラテン語Memoria」には、=「思い出」と「想像力」二つの意味があることも興味深い。記憶は単に出来事の履歴でなく、想像力が加味されることで、さらに味わい深いものになっているのだ。
脳に電気を送ることと、アイデンティティが崩壊してしまう程の記憶喪失とがあまりにかけ離れすぎていて、驚きを禁じえない。有効性について未だ賛否両論なのは、ある意味救いかもしれない。